予測日は収穫の決定日ではなく、判定を始める日
最初に分けるべきなのは、「収穫期の予測」と「個々の果実を採る判断」です。満開日、満開後日数、前年の初収穫日、県の生育情報は、人員や容器、選果場所を準備する日程づくりに役立ちます。しかし、予測日だけを根拠に園内を一斉収穫すると、成熟の進みが異なる果実を同じロットへ入れるおそれがあります。千葉県の令和8年6月号の案内では「幸水」「豊水」の果実肥大が平年より大きく、6~8月は高温となる見込みが示されました。令和8年7月号でも、県内では果実の大きさが平年並みから大きい地域が多いと報告されています。当年情報は巡回を早める材料にはなりますが、自園の適熟を保証する数字ではありません。
収穫準備表には、「予測収穫日」だけでなく「確認開始日」を設けます。確認開始日になったら、園地を品種、樹齢、樹勢、日当たりなど管理上意味のある単位に分け、単位ごとに判定します。前年の日付を使う場合も、そのまま採果日として転記せず、前年の開花盛日、確認開始日、初収穫日、収穫盛期を並べます。当年の開花や気象との違いが大きければ巡回日程を前後させ、実際に採るかどうかは果皮色と確認果で決めます。この二段階にすると、出荷予定に合わせて未熟果を採ることと、準備が遅れて適熟果を残すことの両方を避けやすくなります。
園内を判定単位に分け、確認果の偏りを防ぐ
判定票は園全体で1枚にせず、少なくとも園地または区画ごとに作ります。各単位では、特定の1樹や最も色づいた1果だけを代表にしません。複数の樹を見て、樹冠の内外や受光条件、着果位置が異なる果実を確認対象にします。目的は園内の平均値をきれいに出すことではなく、「今採って同じロットにできる範囲」と「まだ残す範囲」の境界を見つけることです。色の進んだ場所と遅い場所が明確なら、同じ園地でも区画を分けて判定します。確認果には区画名、樹または列、着果位置、確認日を付け、切った後に由来が分からなくならないようにします。
判定票には、カラーチャートの種類、表面色、地色、果肉の状態、食味、結論、次回確認欄を設けます。果肉は、産地や選果場が示す基準に沿って、硬さ、果汁、食感、香りなどを確認します。色が基準付近でも、果肉が基準に達していなければ、その区画は「採る」ではなく「再確認」です。反対に、確認果の一部だけが進んでいる場合も、区画全体を適熟とは扱いません。病害、生理障害、異常な軟化が疑われる果実は、通常の成熟判定から分けて記録し、同じ症状が複数果で続く場合は地域の普及指導機関や選果場へ相談します。
カラーチャートは地域基準と測定条件を固定して使う
農研機構は、ニホンナシの収穫時期判定に表面色と地色のカラーチャートが広く使われていると説明しています。地色は成熟に伴う果皮の緑色の減少を捉え、一般に表面色より熟度を正確に評価しやすい一方、赤ナシではコルク層を除いて確認するため商品性を失います。また、目視判定には調査者や光環境による誤差があります。そこで確認果を除き、商品として採る果実には産地が指定する表面色基準を使い、必要な確認果で地色や果肉を照合する運用が現実的です。担当者、観察部位、光の条件をそろえ、直射光や強い影の中で比較しないよう測定場所を決めます。
千葉県の令和7年7月の生育情報は、同県の「幸水」について地色、表面色ともカラーチャート値2.5~3を目安とし、果皮の着色程度と果肉の熟度を確認して適期収穫するよう示しています。この2.5~3は千葉県の当該資料に基づく目安であり、全国共通値として転用してはいけません。品種が違えば専用チャートや判定部位、適期値が異なる場合もあります。まず自産地の出荷基準、普及指導機関の資料、使用チャートの対象品種を確認してください。複数人で採果する日は、開始前に同じ数果を全員で判定し、読みが割れた果実を責任者と照合してから担当区画へ移ります。
判定と収穫ロットを結び、翌日の巡回順を更新する
採果を始めるのは、地域の色基準と確認果の果肉がそろい、判定単位内のばらつきが許容できる区画です。基準に届かない果実は樹上に残し、同じ区画でも成熟差が大きければ採果範囲を小さくします。収穫容器には品種、園地・区画、収穫日を表示し、早い区画と遅い区画を混ぜません。選果時に未熟果や過熟果が見つかったとき、どの区画の判定へ戻るべきか追跡できることが重要です。確認のため切った果実は商品ロットへ戻さず、判定記録と対応させます。
作業後は、収穫量だけでなく「保留した場所」と「次に見る日」を残します。翌朝は前日に境界だった区画から確認し、色と果肉の進み方を見て巡回順を更新します。収穫終了後には、開花盛日、確認開始日、初収穫日、収穫盛期、最後の収穫日、使用チャート、判定部位、果肉確認の結果を保存します。翌年に使うのは前年の初収穫日だけではなく、この一連の記録です。これにより、年次で生育が前後しても、確認を早めるべき区画と分け採りが必要だった場所を先に割り出せます。実務上のゴールは、最短日数で全果をもぐことではなく、説明可能な判断で熟度の近い果実を同じロットにまとめることです。