盛夏にまず行うのは、全園を同じ時刻だけ運転することではなく、乾きやすい代表区画を一つ選んで配水表を作ることである。農林水産省は、改植・新植後間もない幼木園と、台切り・中切りなどの剪定を行った園を少雨対策の優先対象としている。これに、砂質、有効土層が浅い場所、斜面上部、過去に末端吐出が弱かった系統を加えて巡回順を決める。敷き草による蒸発抑制も共通対策だが、かん水設備があるからといって根域の確認を省くことはできない。

校正は、①固定位置のpFまたは土の湿りで開始可否を判定、②対象区画の面積と目標L/㎡から必要量を計算、③圧力が安定した状態の実流量から運転分数を算出、④元側・中間・末端の吐出と濡れ断面を確認、⑤次回設定を記録、の順で行う。pFが開始域でも、フィルター詰まり、漏水、折れ、末端不足があれば、予定時間を延ばす前に設備を直す。反対に直下だけ深く濡れ、横へ広がらない場合は、まとめて流すほど地下浸透を増やすおそれがあるため、その運転をいったん止めて1回量を見直す。

静岡県の技術資料が示す樹冠下点滴かん水の目安は、赤黄色土で開始時pF2.0~2.3、1回5~10L/㎡、間隔2~3日以内、週20L/㎡以上である。試験では、かん水位置の深さ20cmでpFを測定した。同資料は、点滴チューブを1うねに2本、点滴孔間隔30cm以内とする条件も挙げている。したがって、この数値だけを、チューブ本数、点滴孔間隔、土性、測定位置が異なる園へ移植してはいけない。黒ボク土では1回量を多くして間隔を長くし、砂質土や有効土層の浅い園では間隔を短くするという留意点も付されている。

同県の試験では、樹冠下へ5L/㎡を与えた場合、深さ10~40cmのかん水位置直下で含水率が高まった一方、10~30L/㎡へ増量しても濡れる範囲は大きく広がらず、過剰分は地下浸透した可能性が示された。また、点滴後の水分消費域は2~3日程度かん水位置へ偏り、4日後以降は全域へ戻ったことから、少量を短い間隔で供給する基準が組まれている。pF2.0~2.3と5~10L/㎡は独立した万能値ではなく、この濡れ方と試験条件を伴う一組の基準である。地域の茶栽培指針が別にある場合は、そちらを優先し、同じ深さ・同じ点滴位置で測る園内履歴を蓄積する。

計算は「必要水量(L)=対象面積(㎡)×目標水量(L/㎡)」「運転時間(分)=必要水量(L)÷正常時の実流量(L/分)」とする。面積当たり1L/㎡は水深1mmに相当するため、mm表示の基準も同じ式へ換算できる。ただし、実流量を測る前に、使用中のチューブ、フィルター、減圧弁が製品の指定条件に合っているかを取扱説明書で確認する。点滴チューブは製品ごとに使用圧力、点滴孔間隔、単位長さ当たり吐出量、推奨フィルターが異なるので、別製品の数値を流用しない。

流量計があれば、圧力が安定してから一定時間運転し、前後の指示値の差を運転分数で割る。流量計がない場合は、代表的な吐出口で同じ採水時間、同じ容器を使い、元側・中間・末端を比較する。全農式点滴灌水キットの設置マニュアルも、適正圧力下で1分間の流量を測る手順を示し、水質による目詰まりやフィルター詰まりに伴う水圧低下へ注意を促している。総流量が増えていても漏水なら有効供給量は増えないため、濡れた継手や破損部を先に探す。総流量が減り、末端ほど採水量が少ない場合は、運転延長ではなくフィルター、元圧、バルブ、チューブの折れや詰まりを点検する。

試運転後は地表だけを見ず、点滴位置直下と左右の数点で深さ方向の湿りを確認する。静岡県の試験が深さ10~40cmの変化を調べていることを参考に、園地では根の多い層、有効土層の底、点滴位置から外れた比較点を一定にする。直下の深部だけが濡れて横方向が乾いていれば、同じ回の運転を長くする判断は避ける。1回量の縮小、間隔の短縮、チューブ位置や本数の再検討を地域の指導機関と行う。反対に表層しか湿らない場合も、ただちに運転を倍増せず、所定時間後の再確認と、流量・点滴孔・撥水や硬盤など土壌側の状態を切り分ける。

降雨後は雨量だけで次回を自動取消しにしない。静岡県資料は降水量を供給量として間隔を延ばせるとしているが、傾斜地の表面流去や局地的な雨では、根域へ入った量が雨量計と一致しないことがある。雨後に固定位置のpF、点滴直下と外側の湿り、排水状態を再確認し、開始域へ達していなければ見送る。日誌には、園地名、測定位置と深さ、pF、降雨量、流量計の前後値、運転分数、元側・中間・末端の採水量、濡れの深さ、漏水・清掃の有無を残す。同じ条件で比較できる記録がそろえば、次の少雨時に「何日たったか」ではなく、その系統で必要な水量と運転分数を選べる。