最初に確認するのは果形ではなく、かん水系統の動作です。運転を開始し、フィルターの汚れ、バルブの開閉、圧力計、水漏れ、チューブの折れを見たうえで、各系統の始点、中央、末端から水が出ているかを確認します。農研機構の点滴かん水導入手引きは、同じチューブでも水圧が低いと吐出量が減り、水源から装置までの距離やチューブ長によって計算上の時間では水量が不足する場合があると説明しています。タイマーが予定どおり動いたことと、各株へ予定量が届いたことは同じではありません。

次に、代表株を毎日固定し、チューブ直下だけでなく株元から少し離れた位置も含めて、同じ深さの根域を確認します。表面が濡れていても内部へ十分に浸透していない場合があり、逆に排水不良の場所では根域が過湿になっている可能性があります。朝の萎れ、日中だけの萎れ、回復しない萎れを区別し、発生位置を畝図へ記入してください。最後に収穫数、販売対象外として摘果した果数、株に残した果実の概数、新葉と生長点の状態を記録します。この順番なら、配管不良を草勢低下と取り違えて全区画へ追加かん水する失敗を避けやすくなります。

農林水産省の産地事例では、梅雨明け後の高温・乾燥を受けた露地・施設キュウリで、少量多回数のかん水が対策として挙げられています。ただし、「少量」や「多回」の全国共通値は示されていません。まず一定時間に系統全体から出る水量を、水量計または複数の吐出口で受けた水量から把握します。そのうえで、地域の栽培指針、土質、根の広がり、株数、降雨、日射、排水性に合わせ、一日の予定量と分割回数を決めます。岩手県の数値を例示した農研機構資料も、地域によって異なると明記しているため、その値を別地域へそのまま移してはいけません。

設定を変更するときは、運転時間と回数を同時に大幅変更せず、変更項目、時刻、実吐出量を記録します。翌朝の根域水分、日中の萎れ方、排水の有無を確認してから次の修正へ進みます。雨天後や曇天日に晴天時と同じ設定を続けると過湿になり得るため、土壌水分を見ながら停止や減量を判断します。施設では湿度がこもらないよう換気状態も確認します。水不足が疑われる場合でも、一度の長時間運転で畝間へ流出させるより、各回の水が根域へ浸透しているかを確かめながら分割する方が、原因と結果を記録しやすくなります。

曲がり果などの不整形果は、高温・乾燥下で草勢が低下した産地事例に現れていますが、果形だけで水不足、肥料不足、病害を断定することはできません。同じ日に正常果と不整形果の本数、着果位置、株ごとの偏り、萎れ、新葉の状態を記録し、かん水系統図と重ねます。末端側だけに集中するなら吐出不足を、圃場の低い場所に集中するなら滞水を先に疑って確認します。圃場全体で増えた場合は、天候、収穫量、残した果数、根域水分の推移を並べ、単一の症状で対策を決めないことが重要です。

地域や出荷先の規格に照らして販売対象外となる果実は、株に長く残さず早期に摘果し、着果負担を軽減します。農林水産省の高温対策資料も、果菜類では不良果の摘果や若どりにより着果負荷を軽減し、樹勢維持を図るよう示しています。ただし、果実を一律に落とすのではなく、出荷規格、株の草勢、果実数を見て判断します。摘果後は「回復したはず」と決めつけず、翌朝の生長点、葉の張り、新たな不整形果の発生を確認します。急な萎れが回復しない株や、同じ症状が連続して広がる場合は、水量を増やし続けず、写真、発生位置、管理記録を添えて普及指導センターやJAへ相談してください。

敷きわらや地温抑制資材は、地温上昇と土壌表面からの水分蒸発を抑える選択肢です。遮光資材は施設内への日射を弱めますが、換気不足や過度な遮光を補うものではありません。農林水産省は、施設の妻面・側面の開放、遮光資材、循環扇など複数の技術を組み合わせることを示しています。導入時は全棟を一度に変更せず、比較できる区画を残して、日中の萎れ、葉焼け、新葉、節間、収穫数を同じ時刻に確認します。遮光率や展張時間は、地域の日射条件、作型、資材仕様に基づいて決めてください。

福島県の雨よけキュウリにおける簡易ミスト実証では、晴天時の日中平均気温が2.0~3.0℃低下し、上段の葉焼け・芯焼けの抑制が確認されました。一方、葉濡れにより病害が拡大する可能性や、軒高が低い施設ではノズルと作物の距離を確保しにくいという課題も示されています。同県は、十分な水源があり、自動かん水装置による根域へのかん水ができている圃場での追加対策として位置付けています。したがって、ミストを根域かん水の代わりにせず、温湿度、葉濡れ、換気、水源能力を確認して導入可否を判断します。どの対策でも、作業変更を記録し、翌朝の株と実吐出を再確認して一巡とします。