始業前点検は、エンジンまたは電源を切り、刈刃が動かない状態で行います。最初に取扱説明書を開き、その機種が指定する保護具、刈刃、飛散物防護カバー、肩掛けバンドを確認します。そのうえで、保護メガネまたはフェイスシールド、手袋、すね当て、滑りにくい作業靴、聴覚保護具などを装着します。装備名を読み上げて終わらず、レンズ越しに足元と刃先周辺が見えるか、首や腕を動かしても保護具がずれないか、衣服やタオルが機械へ触れないかまで確かめます。機種や作業条件によって必要品は異なるため、以前使った別の刈払機と同じ組み合わせでよいとは判断しません。

最後に機械側を確認します。刈刃やナイロンコードカッターに、ひび、欠け、変形、著しい摩耗などの異常がないこと、部品が説明書どおりに固定されていること、飛散物防護カバーが指定位置にあり、破損していないことを見ます。異常品を「今日だけ」と使ったり、防護カバーを作業しやすい位置へずらしたりしません。交換部品がない、正しい取付方法が分からない、装備すると操作しにくいという場合は始動を延期し、販売店やメーカーへ確認します。防護具は危険な状態のまま作業を続ける許可証ではありません。

農研機構は、飛散物に有効なJIS T 8147やANSI Z87.1などの規格に適合した保護メガネを示し、通常の眼鏡では強度などが足りず、目の保護にはならないと説明しています。普段の度付き眼鏡だけで済ませず、使用する保護具の表示と取扱説明書を確認します。刈払機側の説明書が保護メガネ、ゴーグル、フェイスシールドなどを指定している場合は、その記載に従います。保護帽と組み合わせるときも、シールドの開閉や眼鏡の位置、あごひもとの干渉を始動前に確認します。

盛夏は汗や湿気でレンズが曇りやすいため、農研機構は保護メガネへの曇り止め使用も挙げています。装着後に地面の石、杭、段差を見渡し、視界が白くかすむ、汚れが取れない、傷などで対象を判別しにくい場合は、そのまま刈り始めません。清掃や曇り止め、適切な部品への交換によって視界を回復させます。作業中に曇った場合も、シールドを上げたまま続行するのではなく、機械を止めて安全な場所で直します。夜間や悪天候などで周囲を十分に確認できないときは、防護具の状態が良くても作業を見送ります。

農林水産省の教育資料は、フェイスガード、防振手袋、すね当て、滑りにくい作業靴を挙げ、斜面ではスパイク付き作業靴などを例示しています。農研機構も、手袋、安全靴、保護メガネまたはフェイスシールド、イヤーマフ、すね当てなどの着用を示しています。ただし、靴底やスパイクの適否は地面の材質、傾斜、機種の説明書に合わせて判断します。すね当てが割れている、靴底が摩耗している、手袋の傷みで確実に握れないなど、本来の役割を果たせない状態なら交換してから作業します。

長袖、長ズボンは袖口や裾が締まり、操作部や回転部へ近づかない服装にします。メーカーの安全情報では、首から手ぬぐいやタオルを下げないよう注意している例もあります。肩掛けバンドは指定された向きで掛け、刈払機を保持したときに無理な前屈や腕の突っ張りが出ないよう、説明書に従って調整します。聴覚保護具を着ける現場では、接近の連絡を声だけに頼らず、作業開始前に停止を確認できる合図を決めます。全装備を着けた状態で停止スイッチへ届かない、視野が狭くなる、姿勢が安定しない場合は、装備を外して作業するのではなく、組み合わせや調整を見直します。

刈刃は取扱説明書が推奨する種類を使い、欠け、ひび割れ、曲がりなどを点検します。農研機構は、取り付け後に手回しして振れや異音がないことを確かめるよう示しています。点検や交換は動力を止め、刈刃を扱う手袋を着けて行います。固定部品の締付方向や工具の使い方は機種で確認し、記憶だけで作業しません。硬い物へ接触した後や異常な振動、音を感じた後は、外見上問題がなさそうでも一度停止し、刈刃、固定部、飛散物防護カバーを再点検します。判断できない異常は使用を中止し、販売店などへ相談します。

飛散物防護カバーは、身体に着ける防護具とは別に必要な機械側の防護です。農研機構とメーカーの安全情報はいずれも、指定位置での使用と、破損時の交換を示しています。草が絡みやすいことを理由に後方へ移動したり、取り外したりしません。また、保護メガネやすね当てがあっても、石、空き缶、針金などを残したまま刈ることはできません。異物を除去できない、安定した足場を確保できない、周囲への飛散を管理できない、体調不良や視界不良がある場合は、刈払機を使わない区間として分け、手工具や別の管理方法を検討します。防護具の点検表には、装備品だけでなく「始めない条件」も同じ欄に置くことが実用的です。