先に「乾燥を開始できる量」を確定する
農林水産省の「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」は、乾燥機の能力に見合った量を計画的に収穫し、速やかに乾燥するよう示しています。収穫直後の籾は水分を多く含み、コンバインのタンクや建物内などに何時間も放置すると、乾燥開始までにカビが生育・増殖する可能性があるためです。したがって、一日の予定は刈取面積からではなく、乾燥機ごとの最大張込量、現在の残量、前ロットの終了見込み、排出・清掃・切替に必要な工程を確認してから組みます。最大張込量や運転条件は型式で異なるため、銘板と当該機の取扱説明書を照合します。
工程表には、ほ場名、品種・栽培区分、刈取開始・終了予定、運搬車、施設到着予定、張込先、乾燥開始予定を記入します。乾燥機が複数台あっても、単純に最大張込量を合計してはいけません。前ロットが残る機械、別品種に割り当てた機械、点検未完了の機械は当日の受入能力から外します。予定時刻を過ぎても前ロットが終わらない、空き乾燥機の割当てがない、張込量が取扱説明書の範囲に収まるか確認できない場合は、次のほ場へ入らず、刈取りを保留します。未乾燥籾の置場を増やすことで能力不足を埋めるのではなく、乾燥開始の見通しが立つまで収穫量を抑える判断が必要です。
張込口までの流れを担当者と再現する
収穫前には、コンバイン、運搬車、グレンコンテナ、張込口、昇降機、乾燥機までを一続きの工程として確認します。実際の担当者が車両を所定位置に止め、オーガやホースが安全に届くか、張込口のふたを開けられるか、電源コードや通路が車両・作業者と干渉しないかを見ます。夜間に受け入れる可能性がある場合は、車両後方、張込口、操作盤、足元を確認できる照明も点検します。通電や空運転は機種ごとの取扱説明書が認める方法で行い、異音、警報、ベルトや搬送部の異常を感じた場合は籾を入れず、販売店や整備担当へ連絡します。
空荷確認では、時刻も測ります。施設到着から所定位置への誘導、荷下ろし準備、張込み、車両退出までをたどり、二台目の運搬車が来たときに待機できる場所と誘導方法を決めます。ヤンマーの乾燥機連携に関する公式情報でも、乾燥状態、穀物の種類、張込量、最大張込量、水分量、終了予定時刻を刈取り側と乾燥機側で共有する考え方が示されています。連携機器がなくても、同じ項目をホワイトボードや共有表で更新できます。担当者は「刈取中」「運搬中」「張込可」「乾燥中」「受入停止」など共通の状態表示を使い、電話がつながらない場合は次のほ場へ進まないルールにします。
残留籾は接触部と落ち込み部で探す
農林水産省のガイドラインは、コンバインのタンク内などを事前に清掃し、籾が直接触れるコンテナや袋には汚れていないものを使うよう求めています。乾燥・調製施設では、床に見える米くずだけでなく、前年産米や別品種が残りやすい箇所を設備の流れに沿って確認します。対象は、張込口、搬送装置、昇降機下部、乾燥機の排出部、配管の継ぎ目、集じん部などです。ただし、開放できるカバーや清掃方法は機種ごとに異なります。自己判断で分解せず、必ず当該機の取扱説明書に従い、必要な箇所は販売店へ点検を依頼します。
農研機構は、米穀乾燥・調製・貯蔵施設の害虫管理として、整理・整頓・清掃・清潔・習慣にモニタリングを加えた「5S+One」を提案しています。重要なのは、虫を見つけたときだけ掃除するのではなく、発生源となり得る穀粒や粉じんを除き、清掃と確認を継続することです。清掃表には、設備名、確認箇所、残留の有無、清掃日、確認者、再点検の要否を残します。品種や栽培区分を切り替える場合は、乾燥機だけでなく、コンバインのタンク、運搬容器、張込設備から排出先までを一つの接触経路として扱い、清掃完了の確認後に次ロットを受け入れます。
初日の実績から翌日の上限を下げる
収穫初日は、刈取終了、ほ場出発、施設到着、張込開始・終了、乾燥開始の各時刻と、張込み前の籾水分、張込量、待機が起きた場所を記録します。目的は作業者の速さを比べることではなく、乾燥開始を遅らせた工程を特定することです。運搬車が戻らない、張込口が空かない、前ロットの終了が予定より遅いといった事実があれば、翌日はコンバインの速度を上げず、刈取開始を遅らせる、対象ほ場を減らす、運搬の割当てを変えるなど、受入側に合わせて計画を補正します。メーカー表示の終了予定時刻を利用する場合も、予測値として扱い、実際の終了と排出完了を確認してから次ロットを割り当てます。
点検や詰まり除去では、安全確保を工程より優先します。農林水産省の農作業安全資料は、コンバインの点検・整備ではエンジンを停止して駐車ブレーキをかけ、詰まりや絡まりの除去は回転部が停止してから行うよう示しています。乾燥機や搬送設備についても、停止、電源遮断、再起動防止など当該機の取扱説明書に定められた手順を守り、稼働中の内部へ手を入れません。故障、停電、警報、受入能力超過が起きたときの連絡順、修理依頼先、代替施設へ相談する担当者を掲示し、乾燥開始の見通しが戻るまで刈取りを再開しないことを全員で確認します。