結論:最も遅い工程に根切り面積を合わせる
朝の打合せでは、根切り機の作業能力だけで当日の面積を決めないようにします。根切り、必要に応じた球の反転、ピッカーなどによる搬出、乾燥場所への収容、選別の各工程について、その日に処理できる面積または容器数を確認し、最も小さい能力を当日の上限にします。例えば根切り機には余力があっても、前日の球が乾燥場所を占有していれば、新しい区画へ進みません。途中で作業を止めても根切り済みと未処理の境界が分かるよう、畝や通路を単位に小区画化しておきます。
この方法の狙いは、根切り済みの球を予定外に地表へ残したり、乾きの異なる球を同じ容器へ詰めたりしないことです。農研機構の東北地域向け春まき栽培マニュアルでは、根切り後に数日置いて球を反転すると乾燥が早く進み、乾燥後はピッカーやハーベスターで収穫して乾燥機などを利用する体系が示されています。ただし、必要日数や乾き方は天候、品種、土質、茎葉の状態で変わります。したがって「根切りから何日後に全量搬出」と先に固定せず、ロットごとの実物確認を次工程へ進む条件にします。
根切り前は生育と2日先の高温を一緒に判定する
第一に球と株を確認します。農研機構の同マニュアルは、東北地域の春まき作型について、全体の80%が倒伏した後の晴天時を根切りの目安としています。一方、農林水産省の高温対策資料は、球を覆う保護葉、すなわち茶色の皮が形成し始めてから根切りするよう示しています。倒伏割合だけを見て着手せず、区画内を数か所歩き、保護葉の形成、球の露出、濡れ、土の付着しやすさを同じ記録票へ残します。80%倒伏は東北の特定作型に関する目安であり、他地域や異なる品種では、都道府県、普及指導機関、JA、出荷先の基準を優先してください。
第二に、当日だけでなく根切り後2日程度の時間帯別予報を確認します。岩手県農業研究センターの事例では、最高気温36.4℃の日の午前10時ごろに根切りし、その後2日以内に35℃以上の高温へ約6時間遭遇した条件で、根切り2日後から日焼け球が確認されました。県は35℃近くに達する晴天日の根切りを控えるよう注意しています。農林水産省資料も、最高気温が35℃を超える日の根切りは日焼け球のリスクを高めるとしています。これは「35℃未満なら安全」という境界ではありません。強い日射、球の露出、保護葉、遭遇時間も含め、35℃近い晴天が見込まれる場合は延期する判断が必要です。
地干し日数を固定せずサンプル球で搬出を決める
根切り後は、毎日ほぼ同じ時刻に区画内の複数地点から球を選び、首部と外皮の乾き、球表面の湿り、付着土、へこみや変色の有無を観察します。日当たりのよい畝端だけで判断すると区画中央の湿りを見落とすため、外周、中央、低い場所を含めます。反転を行う場合も、予定日だけで実施せず、球の状態、予報、機械作業で傷を増やさない条件がそろっているかを確認します。急な高温や降雨が見込まれるときは、未処理区へ広げるより、すでに根切りしたロットの点検と搬出準備を優先します。
岩手県農業研究センターが2020~2021年に3品種で行った試験では、調査個体の9割が葉鞘水分率60%以下となるまでの期間が、品種や根切り時期により根切り11日後から21日後まで異なりました。これは岩手県内の試験条件と供試品種による結果で、全国共通の搬出日数ではありません。現場で水分率を測定しない場合にも、「前年と同じ日数だから」ではなく、地域の収穫基準に従ってサンプル球の葉鞘や外皮を確認する必要があります。降雨を挟んだ場合は日数を数え直すのではなく、球が再び乾燥していることを確かめてから搬出可否を更新します。
濡れた球と異常球を分離し翌日まで追跡する
農林水産省の資料は、球が濡れた状態で収穫すると、腐敗した個体から漏れた汁液を介して健全な球へ影響が広がるおそれがあるため、乾燥を確認して収穫し、収穫後も乾燥状態を維持するよう示しています。朝露、降雨、湿った土の付着があるロットは、乾いたロットと同じコンテナへ入れません。軟化、傷、汁漏れ、異臭などを認めた球も分けます。外観だけで病名や原因を断定せず、発生位置と写真を記録し、必要に応じて普及指導機関やJAへ相談します。問題球が混入しやすいロットでは、通常より選別速度を落とすことも同資料に示されています。
ロット記録には、ほ場・区画名、品種、倒伏割合、保護葉の状態、根切り日時、当日から2日先までの予報、反転日時、降雨・朝露、搬出時の乾き、容器番号、乾燥場所を記入します。翌日には、南側など直射を受けた面のへこみ、変色、湿り、軟化、汁漏れを同じロット単位で再確認します。異常が集中する区画や時間帯が分かれば、そのロットだけを追加点検でき、他の乾いたロットとの混合も防げます。作業日報を単なる実績表にせず、翌朝の「搬出継続・追加乾燥・選別強化・相談」を決める判断票として使うことが、貯蔵工程へ不確かな球を流さない最後の防波堤になります。