先に決めるのは被覆日数ではなく、測定場所と解除条件
農林水産省の高温対策資料は、秋まきタマネギの発芽不良要因として、セルトレイ内の温度が発芽適温を大きく超えることと、発芽に必要な水分の不足を挙げている。発芽適温の目安は15~20℃、透湿性被覆資材などによる発芽促進期間は7日程度とされる一方、催芽を確認したら暗所から明るい場所へ移すよう明記されている。したがって7日は解除日ではなく、作業計画を立てる際の目安として扱う。発芽開始、被覆解除、明所への移動を一続きの作業として担当者と時刻を決めておく。
測る対象はハウス内の気温だけではない。富山県の試験では、培土表面から1cm下で温度を測定している。自園でも実際にトレイを置く高さで、中央、四隅、日射を受けやすい側などの培地温を測る。播種前の晴天日に、使用予定の被覆区と無被覆区を同時に設け、日中最高温度と上がり始める時刻を比較する。センサーの深さ、トレイ位置、資材名、測定時刻が変わると比較しにくいため、測定方法を固定する。被覆材は大きな一枚で全トレイを覆うより、発芽状況に応じて外せる管理区画に分けておくと判断を実行しやすい。
公的試験の33.1℃を自園の保証値にしない
富山県農林水産総合技術センターの試験では、9月1日播種、448穴セルトレイ、指定培土という条件で、透湿性遮熱資材を掛けた区の培地温は平均28.9℃、最高33.1℃だった。無被覆区の最高は36.7℃で、他の供試資材には40℃を超えたものもある。同センターの別資料では、高温期に遮熱シートを発芽ぞろいまで掛け、培地内最高温度を33℃以下に抑えることで発芽が良好になったと報告している。ただし、これらは特定の施設、資材、培土、トレイ、時期で得られた試験値であり、「33℃以下ならどの品種でも安全」という全国共通の基準ではない。
本番では、朝の涼しい時間にトレイ中央と外周を確認し、発芽したセル数を同じ範囲で数える。発芽が始まった区画は被覆を直ちに外し、明るい育苗場所へ移す。新潟県も、乾燥防止の遮光を発芽ぞろい後まで続けると苗の徒長や倒伏を助長するため、除覆するよう示している。発芽が遅い区画だけを再被覆する場合は、温度だけでなく、播種深度、覆土の厚さ、かん水ムラ、トレイの傾き、種子ロットを確認する。原因を高温だけに決めつけて全体の被覆期間を延ばすと、すでに発芽した苗を暗所へ置き続けることになる。
播種4日後は「一律かん水日」ではなく水分点検日
遮熱被覆には温度上昇を抑える効果があっても、乾燥を完全に止めるとは限らない。富山県の試験では、供試した透湿性遮熱資材の被覆下で96時間後に培土水分が20%を下回り、表面が乾いて白くなった。この結果を踏まえて同県は、播種時に十分かん水し、播種約4日目にはかん水が必要な程度まで水分が低下する点を留意事項としている。ただし4日という間隔も試験条件に依存する。自園では4日後を自動的な給水日ではなく、トレイ重量、培土表面の色、表層と下層の湿り、中央と外周の差を詳しく調べる点検日にする。
かん水する場合は、被覆を戻す前に全体へ均一に水が入ったか確認する。ノズルの吐出差、散水の重なり、棚の傾きがあると、同じ運転時間でもセルごとの水分はそろわない。発芽後は乾燥による生育抑制や葉先枯れを防ぐ一方、頻度や量が多すぎるかん水による根傷みと過湿も避ける。農林水産省資料は、培土の乾きに応じたこまめなかん水、屋内育苗で25℃を超えた場合の換気、過湿時の換気を示している。時計だけで一斉に追加給水せず、乾いた区画を特定し、作業後に排水とトレイ重量を再確認する。
解除後の乾燥と豪雨時の滞水を別の問題として管理する
被覆を外した直後は、日射と通風が変わって培土の乾燥が速まる可能性がある。解除した時刻、天候、培地温、かん水量を記録し、解除前後でトレイ重量がどう変わるかを追う。初日から遮光をすべて撤去するか、施設全体の遮光を残すかは、被覆資材の種類と実測温度で決める。種子の上を直接覆う資材は発芽確認後に外しつつ、ハウス外張りなどの高温対策は、発芽後の明るさを確保できる範囲で別に調整する。被覆解除と施設遮光を同じ操作として扱わないことが、暗所による徒長と急激な昇温の両方を避ける要点になる。
露地や開放型施設では、乾燥対策と同時に豪雨時の排水を準備する。農林水産省資料は、セル内に水分が滞留して酸素不足になる事態に対し、畝上へのトレイ設置と明きょによる表面排水を挙げている。播種前に育苗面の低い場所、水の出口、明きょから排水路までのつながりを確認し、散水後にも滞水箇所を探す。管理表には品種・ロット、トレイ位置、培地最高温度、朝の発芽数、被覆解除時刻、かん水量、排水状況を一行で残す。次年度は「何日被覆したか」ではなく、どの温度と水分で発芽し、いつ解除したかを比較できる記録にする。