最終草刈り日ではなく「刈り止め期間」を決める
農林水産省の2026年7月9日付け通知は、畦畔、農道、休耕田の除草を出穂10日前までに完了するよう示しています。一方、国の総合防除に関する基本指針は出穂2週間前まで、農林水産省の一般向け資料は出穂10~15日前までを目安としています。数字を全国一律に選ぶのではなく、都道府県の防除指針や地域の防除暦に定められた期限のうち、自分の地域に適用されるものを優先します。地域基準が出穂15日前なら、全国通知の10日前まで待たず、15日前を締切にします。
作業表には、ほ場名、品種、移植日、予想出穂日、地域基準、最終草刈り期限、完了日、刈り止め期間、再開判断の確認先を並べます。例えば予想出穂日が8月5日で地域基準が14日前なら、7月22日までに完了させます。重要なのは7月22日だけを書くのではなく、7月23日以降を「予定外の畦畔草刈りを入れない期間」として色分けすることです。地区の一斉作業、道路管理、草刈り受託者にも同じ表を渡せば、出穂直前に別の担当者が刈る行き違いを防げます。
出穂予測の更新日まで記録する
2026年の農林水産省通知では、7月7日時点で29道府県が斑点米カメムシ類の発生を「やや多い~多い」と予報し、水稲を対象とする注意報が5県から発表されていました。同通知は高温傾向による水稲出穂期と防除適期の前進にも注意を求めています。その後の全国集計も7月22日時点の都道府県別予報を掲載していますが、全国表は地域の発生種や個々の田の生育を直接示すものではありません。自県の病害虫防除所が発表する最新情報と、実際の幼穂・出穂の進み方を合わせて判断します。
複数品種や移植時期の異なる田を、地区の代表的な出穂日だけで管理してはいけません。早生品種、周囲より早く出穂する田、遅れて出穂する田は、イネカメムシの集中加害を受けるおそれがあると農林水産省も注意しています。予想出穂日は田ごとに置き、確認した日と情報源も残します。予測が2日前倒しになった場合は、草刈り期限も2日前倒しです。作業能力が足りなければ、期限が早い田、畦畔に出穂したイネ科雑草がある田、休耕田や牧草地に隣接する田から割り付けます。ただし、管理権限のない道路、河川敷、隣接地を無断で刈ることはできないため、管理者との日程調整を先に行います。
刈り止め後は畦畔と水田内を分けて考える
多くの斑点米カメムシ類は水田周辺の雑草で生活し、イネの出穂に伴って水田へ侵入します。農研機構が紹介するアカヒゲホソミドリカスミカメの試験では、出穂14日前の草刈りと異なり、出穂期や出穂21日後の草刈りでは、農道から水田へ追い込まれた標識虫が水田内に残りました。対象種と試験条件が限られる成果ですが、出穂前後の予定外の草刈りを避ける根拠になります。草丈が気になるという理由だけで、締切後に畦畔や隣接雑草地を一斉に刈るのは避けます。
一方、水田内のノビエやイヌホタルイは、アカスジカスミカメなどの増殖源や飛来源になり得るため、畦畔の刈り止めと同じ意味で放置するものではありません。作業前の見回りでは、畦畔・農道・休耕田に出穂したイネ科雑草があるか、水田内にノビエやイヌホタルイが残っているか、イネの出穂が始まっているかを別々に記録します。水田内雑草への対応は、稲の生育段階、雑草の種類、使用できる方法によって異なります。除草剤を検討する場合は、当年の農薬登録情報、製品ラベル、使用時期、使用量または希釈倍数、使用回数、収穫前日数を確認し、適期を過ぎた薬剤を使わないでください。
出穂後の再開日は地域の防除体系から決める
出穂後に畦畔草刈りを再開できる全国共通の日数は置けません。農林水産省の一般資料は出穂期以降の畦畔除草による水田への追い込みを注意点として示し、国の総合防除指針は近隣ほ場の収穫後に畦畔、農道、休耕田を除草する措置を挙げています。他方、岩手県の研究成果には、地域で主要なアカスジカスミカメを対象として、穂揃期後の薬剤散布からおおむね1週間以内に畦畔を刈る体系が示されています。これは薬剤の残効、対象種、地域の防除指針を組み合わせた条件付きの技術であり、薬剤を散布していない田や他県へそのまま移せる日程ではありません。
したがって、締切を過ぎた田では「今すぐ刈る」「収穫まで一切刈らない」のどちらも、全国情報だけで決めないことが実務上の要点です。品種、移植日、予想出穂日、現在の出穂割合、最後に刈った日、畦畔雑草の出穂、水田内雑草、実施済み・予定中の薬剤防除、隣接地の管理予定をそろえ、病害虫防除所、普及指導機関またはJAへ確認します。薬剤防除はカメムシの種類によって適期が異なり、イネカメムシでは出穂期の1回目防除が重要です。草刈り日から機械的に散布日を決めず、地域予察とほ場観察、現行の登録内容に基づく防除計画の中へ草刈りの再開条件を組み込んでください。