最初に作るのは終了予定表ではなく、計測仕様書です。圃場名、施設・露地の別、畝番号、センサー位置、深さの基準面、設置日時、記録開始時刻、測定間隔、被覆資材、かん水終了時刻を一枚にまとめます。農研機構の「陽熱プラス実践マニュアル」は、地温が深さや位置で異なるため、計測方法を一定にそろえることが重要だと説明しています。同マニュアルの標準手順は、畝立て後の圃場中央、畝中央に近い1地点の深さ15cmです。この15cmは「陽熱プラス」の手順であり、あらゆる作物、病原体、処理方式に共通する万能値ではありません。地域資料で別の深さが指定されている場合は、その条件を優先します。

圃場間や年次間を比べる基準点は、毎年ほぼ同じ条件になる位置に固定します。端部や日陰など別の場所も調べたい場合は、基準点を移すのではなく、補助点として区別して追加します。記録には見取図と設置直後の写真を添え、深さを地表面から測ったのか畝頂部から測ったのかも明記します。開始前には複数のセンサーを同じ環境に置き、表示が大きく食い違わないかを現場確認しておくと、処理後に位置差と機器差を混同しにくくなります。確認結果は数値を書き換える理由にせず、そのまま点検欄へ残してください。

農研機構のマニュアルは、設定例として設置予定日の午前0時から1時間間隔で記録し、処理途中にもデータを回収して地温推移を確認する方法を示しています。重要なのは「1時間」が全国一律の義務ということではなく、途中で設定を変えず、圃場間で同じ時間軸を使うことです。日報には最高・最低温度だけを転記せず、時刻付き原データを別に保存します。日平均、日最高、一定温度以上の時間を計算した表は加工データとして分け、計算式、対象期間、除外した行を記載します。元の値を上書きすると、後から集計条件を変えて検証できません。

巡回では、フィルムの破れ・浮き、裾の開き、冠水、センサーやケーブルの露出、電池切れ、時刻ずれを確認します。温度曲線の急な途切れや不自然な横ばいを見つけても、都合のよい近隣値で置き換えず、「欠測」「設置異常の疑い」などのフラグを付けます。農研機構は、地温計がない場合などに近隣アメダスの日最高気温と日照時間から日最高地温を推定する方法も示していますが、適用対象は被覆下で、露地は深さ5cm、ハウスは15cmの日最高地温です。日最高地温の推定値を、実測した1時間値や一定温度以上の実測時間と同じものとして継ぎ足してはいけません。推定値を使う場合は実測値と列を分けます。

地温データの判定には、先に対象を定め、その病原菌などについて公的資料で確認できる温度と継続時間を使います。和歌山県農業試験場は、エンドウから分離した特定のフザリウム属菌を用いた試験で、土壌水分が最大容水量の60%の場合、43℃で48時間、45℃で36時間、50℃で24時間の処理により供試菌株が死滅したと報告しています。一方、最大容水量の20%または40%では、試験した各温度でも120時間以内に完全には死滅しませんでした。これは水分と加熱条件を組み合わせて読む必要性を示す事例ですが、この数値を別の病原菌や別の土壌へそのまま転用することはできません。

したがって記録表には、一定温度以上の積算時間だけでなく、処理前の水分確保方法、かん水量または地域で採用する水分指標、かん水後から被覆までの時間も残します。積算時間を計算するときは、対象資料が連続時間を求めているのか、閾値以上の時間を合計するのかを確認します。「43℃以上を合計48時間」と「43℃が連続48時間」は同義ではありません。根拠資料の条件が不明な場合、ロガーの記録だけで処理完了とは判定せず、病害虫防除所や普及指導機関に対象、土壌、測定深さ、原データを示して相談します。茨城県病害虫防除所も、冷夏年には太陽熱土壌消毒の効果が劣る場合があると注意しています。

終了時は、基準点と補助点を分けて、対象ごとの閾値、到達時間、欠測時間、被覆異常の発生区間を一覧にします。基準を満たした区間だけを色で強調し、未到達や判定不能を空欄にしないことが要点です。予定していた日が来ても、主要な測定点が未到達なら、作付け日程、今後の天候、フィルムの状態を踏まえて延長または別の防除手段を検討します。反対に数値が到達していても、対象と測定条件が根拠資料に一致しなければ「効果確認済み」とは記録しません。処理後の発病、雑草発生、必要に応じた土壌中の病原体検査を同じ圃場台帳へ追記すると、翌年に温度履歴との関係を検討できます。

地温履歴は施肥設計にも引き継ぎます。農研機構の高地温培養試験では、30℃と比べて45℃または60℃で土壌有機態窒素の無機化が進み、圃場では変動する作土の地温を実測または推定する必要があるとされています。ただし、無機化量は土壌特性にも左右され、研究成果も今後さまざまな土壌での検証が必要としています。このため、地温だけから一律の減肥率を決めず、処理条件、施肥履歴、地域で利用できる土壌分析を確認して次作の基肥を設計します。最終的に保存する一式は、設置図、原データ、加工表、異常履歴、終了判定、処理後の土壌分析と作柄記録です。