初年度は「効いたか」を判定できる処理区を作る
3日冷蔵は、空いた果実予冷庫を利用し、トレイ苗を13~15℃の暗黒条件に3日間置く花芽分化誘導法である。農研機構の試験では「さぬき姫」「ゆめのか」「さちのか」で出蕾を早める効果が確認された一方、品種と試験年によって効果の現れ方は異なった。2021年の試験では「ゆめのか」の平均出蕾日が有意に早まったが、「さぬき姫」と「さちのか」では処理区間に有意差がみられなかった。試験年が冷涼で、無処理苗も早く花芽分化していた可能性が論文で指摘されている。技術名だけを根拠に全量処理へ進むのは避けたい。
導入時は、同じ品種、採苗日、トレイ規格、施肥履歴の苗を二つに分け、一方だけを冷蔵する。両区は同じ日に定植し、株ごとの出蕾日、頂花房第1花の開花日、定植から出蕾までに展開した葉数を記録する。処理区だけ定植日や定植後の管理を変えると、冷蔵の効果と定植条件の差を切り分けられない。比較株数や配置は普及指導機関と相談し、ほ場内の場所による温度・日射差が一方へ偏らないようにする。初年度の目的は早出しの成功を断定することではなく、自園の品種、苗質、庫、定植体系で再現できるかを確かめることに置く。
処理日は地域の分化情報から候補期間を置く
農研機構は、効果を得やすい処理開始時期を、各品種・栽培地における自然条件下の花芽分化時期のおよそ1週間前としている。ただし、これは全国共通の暦日ではない。試験は主として2020~2022年に香川県善通寺市で行われ、供試苗は6月下旬に採苗した24穴トレイ、培地容量175mLの苗だった。8月下旬から9月下旬が平年より高温の年には自然分化が遅れ、適切な処理開始時期も遅れる可能性がある。前年の入庫日や別県の栽培暦をそのまま転用せず、地域・品種別の過去の分化確認日と当年の気温経過から候補期間を置く。
香川県農業試験場の資料では、通常のポット促成栽培において、実体顕微鏡による花芽分化確認が定植可否や頂花房開花時期の予測材料に使われている。3日冷蔵も、こうした地域の確認体系と切り離さないことが重要だ。普及指導機関や部会が実施する検鏡予定、自然育苗苗の分化状況、品種別の定植基準を確認し、「処理候補日」「入庫・出庫時刻」「検鏡日」「定植日」を一枚にする。処理が早すぎても遅すぎても無処理と同程度になる場合があるため、冷蔵後の苗を分化確認なしで一律に定植してよい、という技術ではない。地域で未検証の品種は特に、指導機関と処理日、検鏡、定植判断を組み合わせたい。
苗数より先にロットの履歴と充実度をそろえる
原著論文の「女峰」の試験では、採苗時の展開葉が3~4枚の大苗で花芽分化誘導効果が得られた。展開葉1~2枚の小苗も、冷蔵処理によって無処理の大苗より開花が遅くなったわけではないが、論文は小苗で処理前3日間の日照が少ない場合、効果が不安定になる可能性を指摘している。したがって、葉数が異なる苗を一括して平均化せず、品種、採苗日、採苗時葉数、トレイ規格、施肥履歴ごとにロット番号を付ける。病害や萎れなど処理前の異常も記録し、状態が大きく異なる苗を同じ比較群へ混ぜない。
トレイを密に並べた育苗では株当たりの受光面積が小さくなり、光合成産物を蓄積しにくい可能性がある。論文は、寡日照時の遮光を避けることが重要としているが、これは晴天時の高温回避まで一律に否定する意味ではない。日射条件を見ずに遮光資材を掛け続けるのではなく、晴天・曇雨天ごとの開閉、トレイ間隔、苗の葉数と草姿を記録する。既存の間欠冷蔵マニュアルでも、充実した苗、適切な窒素状態、天候に応じた遮光が処理上の注意点とされる。ただし、間欠冷蔵は冷蔵と自然条件を2~3回繰り返す別方式であり、その日程を3日冷蔵へそのまま移してはならない。
設定温度ではなく苗位置の温度と作業時刻を残す
3日冷蔵の試験条件は13~15℃、暗黒で、農研機構は苗の入出庫を正午頃としている。2021年試験の庫内平均は14.1℃、2022年試験の全期間平均は15.3℃だったが、2022年9月18日開始区では3日平均が16.0℃となった。この区では「さちのか」の出蕾が無処理より早まらなかった。ただし、一つの区の結果だけから16.0℃を失敗温度と断定することはできない。重要なのは、設定表示だけで条件を満たしたとみなさず、実際に苗が経験した温度を後から確認できるようにすることだ。
空庫での試運転後、可能なら空トレイなどで積載状態を再現し、上段、中央、下段、冷気吹出口付近、扉側などに温度ロガーを置く。本番では入庫時刻、出庫時刻、扉を開けた時刻、トレイ枚数、棚ごとのロット、各測定点の最高・最低・平均温度を記録する。論文には1坪サイズの冷蔵庫へ50×36×高さ8cmの35穴トレイを1回50枚、1,750株収容する試算例があるが、これは特定のトレイと配置による例であり、自園の収容能力を保証する数字ではない。棚、通風、冷却能力、トレイ寸法を確認し、過積載で温度分布を崩さない。処理後は出蕾・開花記録と庫内温度をロット単位で照合し、効果がそろわなかった原因を翌年の計画へ戻す。