校正の初日は、通常使う水源、ポンプ、フィルター、バルブの状態で点滴ラインを運転し、始点・中央・末端から同時に採水する。例えば10分間の採水量を測った場合、1孔当たりの実吐出量は「採水量mL×6÷1000」でL/時へ換算できる。1株に対応する点滴孔数が分かる設備なら、その孔数を掛けて1株1時間当たりの供給量を求める。孔と株が対応しない点滴テープでは、一定長の全吐出量をその区間の株数で割るか、区画全体の流量を水量計などで測って株数で割る。

1日の運転時間は「目標かん水量(L/株/日)÷実測した供給量(L/株/時)×60」で求める。計算結果は一日の総分数であり、一回の連続運転時間ではない。岩手県農業研究センターは、必要量を可能な範囲で少量多頻度に分けることが望ましいとしている。ただし、分割すると各回の運転が短くなり、ラインへ水が行き渡る前に停止する設備もある。最初の吐出までの時間を確かめ、全点滴口から安定して出始めた後の実運転時間で考える。

始点と末端で量がそろわない場合は、平均値だけで計算を進めない。農研機構の施設園芸マニュアルも、点滴チューブの先端部と末端部の吐出量を等しくする必要性を示している。フィルターの汚れ、点滴孔の詰まり、漏れ、折れ、圧力不足、畝面の高低差を先に点検する。総運転時間だけを延ばすと、よく出る株にはさらに多く、出ない株には十分届かない状態を残してしまう。

岩手県農業研究センターが雨よけ夏秋ピーマンについて示した天気別の参考値は、7月が晴れ4.1L、曇り2.6L、雨0.6L、8月が晴れ4.8L、曇り3.6L、雨1.2Lで、いずれも1株1日当たりである。日射比例式では、葉面積指数が3のとき、日積算日射量1MJ/m2当たり250L/10a、約188mL/株を計算の前提としている。試験では指標区の総収量が水量不足の対照区より24~39%多く、尻腐れ果発生率は総収量の5%以下だった。これは試験条件下の成果であり、自園で同じ結果を保証する数字ではない。

同資料の適用対象は岩手県内であり、試験は塩類集積がなく排水良好な土耕ほ場で実施された。品種は「京鈴」、栽植密度は10a当たり1,333株、主枝4本仕立てである。地域、品種、株間、葉量、着果負担、土性、遮光条件が異なれば水需要も変わる。最初に地域の栽培指針や普及指導機関の基準を確認し、該当する基準がない場合に岩手県の値を仮の出発値として扱う。異なる地域の晴天値を、そのままタイマーへ設定する使い方は避けたい。

雨天日の値も「雨なら必ずこの量」という意味ではない。雨よけ施設では根域へ雨が直接入らなくても、日射低下によって作物の水需要は変わる一方、側面からの吹込みや施設外からの流入が起こる場合もある。農研機構の点滴かん水手引きは、単純なタイマー運転では降雨による土壌水分上昇や高温時の低下に自動対応できず、停止や追加かん水などの調整が必要だと説明している。天気区分だけでなく、前回運転後の根域水分を確認して当日量を決める。

岩手県の試験では、畝中央の深さ20cmにポーラスカップが位置するようpFメーターを設置した。指標区のpFは、2023年8月を除く栽培期間に1.7~2.3で推移し、対照区では慢性的に2.9を超えた。これは試験で観測された範囲であり、すべての土壌に共通する開始値・停止値ではない。pFは値が高いほど乾燥側を示すが、設置位置や土性が変われば読み方も変わるため、自園では同じ畝、株からの距離、深さ、測定時刻を固定し、数日間の変化として判断する。

センサーがない場合も、表面の色だけで決めない。代表株を決め、点滴口直下だけでなく根が分布する位置の20cm付近まで湿りが届いたかを、土を握る、試掘するなど毎回同じ方法で確認する。農研機構の施設園芸マニュアルでは、黒ボク土は点滴位置から比較的横方向にも水が広がり、砂丘未熟土では直下へ浸透しやすいと整理している。同じリットル数でも濡れる範囲は土壌で異なるため、吐出量の校正と根域への到達確認は別工程にする。

次回運転前に20cm付近が乾き過ぎる一方、かん水直後には適度に湿るなら、一日の総量だけでなく分割回数を検討する。表面は濡れるのに20cmへ届かない場合は、短時間運転の分け過ぎ、点滴位置、土の水みちを点検する。反対に、20cmが湿ったままで畝間に水が残る場合は、追加運転を保留し、雨水の流入、排水口、局所的な締まりや低部を調べる。乾燥株と滞水株が同じ棟にあるときは、棟全体の時間を一律に増やさず、設備の供給ムラと土壌の排水差を先に切り分ける。

農林水産省の施設ピーマン資料は、高温・乾燥時の日焼け果や生育不良、高温・多湿時の尻腐れや立枯れなど、異なる水分・湿度条件で問題が生じ得ることを示している。尻腐れ果や日中のしおれを見ただけで、直ちに一日の水量を増やすのは危険である。果実症状、20cm付近の水分、点滴の吐出、かん水後の排水、施設内の湿度と換気を同時に確認し、どの条件が崩れたかを絞り込む。異常株が一部だけなら、株元の点滴孔や根傷みも個別に見る。

調整日は、前日の天気、総運転分数、運転回数、始点・中央・末端の採水量、朝と次回運転前の根域水分、畝間の滞水、しおれの回復、障害果数を一枚に記録する。一度に総量、回数、遮光、整枝をすべて変更すると、何が効いたか判断できない。まず供給ムラを直し、次に総量または回数のどちらか一方を小さく変更して、同じ観測点を翌朝と数日後に再確認する。葉量や収穫負荷が変わる盛夏は、先週のタイマー設定を固定値にしない。

点滴設備は、吐出を測った日だけ正常とは限らない。農研機構の手引きは、小さな点滴孔の詰まりを防ぐためフィルター清掃が必要とし、水源によって頻度を変えるよう示している。使用中の製品についてはメーカーの取扱説明書に従い、使用圧力、最大ライン長、ろ過条件、洗浄や末端開放の方法を確認する。校正後も採水量が変わったときは、作物の必要量が変化したと決めつけず、先に水源、圧力、フィルター、ラインを再点検する。