着色不良を見ても、摘葉不足とは決めつけない
農林水産省の令和6年地球温暖化影響調査レポートでは、果実肥大期以降の高温によるブドウの着色不良・着色遅延が報告され、影響がみられた地域の割合は全国で2~3割、西日本で4~5割でした。これは都道府県から報告された影響を面積ベースで整理した結果であり、個々の園の原因を診断する数値ではありません。それでも、盛夏の色の遅れを摘葉不足だけで説明できないことは明確です。まず品種、満開日、着色を初めて確認した日、着果量、代表果房の糖度、直近の気温経過を同じ記録票に置きます。
農研機構は、赤色・黒色ブドウの果皮を着色させるアントシアニンの合成が高温で阻害されると説明しています。「巨峰」と「ピオーネ」を対象にした研究では、気温が果皮色へ影響する期間はおおむねベレーゾン期から収穫始期で、「巨峰」は満開後50~92日、「ピオーネ」は満開後46~91日でした。ただし、この日数を別品種へそのまま移すことはできません。自園の満開日と着色開始日が不明なままでは、摘葉試験の適期も判定できないため、色の濃淡より先に生育段階を確定します。
赤色系は着色開始日と果実の状態をそろえて試す
山梨県果樹試験場の成果情報では、赤色系品種について、果粒に十分水を引き込んだ着色始めの1~2週間後に、果房上部の基葉を1~2枚除く方法が示されています。試験された「サニールージュ」「サニードルチェ」「クイーンニーナ」では、摘葉区で成熟期のアントシアニン含量が増加しました。果粒重は若干小さくなった一方、糖度が高く、減酸が早まる傾向も報告されています。これは赤色系の特定品種と試験条件で得られた結果であり、園全体を一斉処理する根拠にはしません。
着手するときは、樹勢や着果状態が近い場所に処理区と無処理区を残し、処理した品種、着色開始日、摘葉日、除いた葉の位置と枚数を記録します。作業直後には、果房へ直射が新たに当たっていないかを確認します。翌日以降も同じ果房を撮影し、日焼け、しおれ、果面の急な変色がないかを比較します。山梨県の成果情報は、糖蓄積が不良な年には効果が低い傾向も示しているため、糖度が低い区画で葉だけを追加して取らず、樹相と着果量を先に見直します。
ピオーネと未試験品種へ赤色系の結果を移さない
同じ山梨県の試験で、黒色系の「ピオーネ」には摘葉による着色向上効果が認められませんでした。したがって、赤色系の処理手順を「有色ブドウ共通」として扱うことはできません。ピオーネで色が遅い場合は、摘葉枚数を増やす前に、満開後日数、着果過多や大房化の有無、代表果房の糖度、果房周辺の光、着色期の気温履歴を確認します。他の黒色系品種についても、ピオーネの結果だけで効く、効かないと断定せず、各県の栽培指針や普及指導機関の品種別情報を優先します。
黄緑色系の「シャインマスカット」では、果皮の赤色化を目的とする摘葉判断とは分けて考えます。山梨県の棚の明るさ計測アプリは、露地・短梢剪定のシャインマスカットを対象とし、ベレーゾン終了後の目標LAIを4.0~4.5としています。同県は、計測区画の4か所程度を撮影して平均する方法と、極端な新梢切除を避けて段階的に管理する注意点も示しています。この目標値を有色品種、長梢剪定、施設栽培へ転用せず、定点写真で作業前後を比較する考え方だけを参考にします。
高温が続く期間は、処理を広げる前に再点検する
高温条件では、山梨県の成果情報も摘葉を段階的に行うよう求めています。特に「サニールージュ」は日焼けが発生しやすいとされるため、処理後に果房が直射へ露出する場所では追加摘葉を中止します。棚全体が暗く見えても、果房だけが葉の隙間から強い直射を受けることがあります。棚面の写真と果房正面の写真を分けて残し、葉を取った区画で直射時間が増えた場合は、地域の指針に沿って傘などの日焼け防止策を検討します。障害が疑われる果房は写真だけで断定せず、管理履歴を添えて普及指導機関やJAの技術担当者へ相談します。
翌日の作業量は、処理区の観察結果と気象庁の予報を組み合わせて決めます。2週間気温予報は毎日発表され、2週目は8~12日先を中心とした5日間平均の見通しです。早期天候情報は、その地域・時期として10年に1度程度の著しい高温となる確率が30%以上と見込まれる場合などに発表されます。高温の見通しが強まった日は新しい処理区を増やさず、すでに処理した果房の日焼けと着色経過を確認します。摘葉の成否は一日で判定せず、無処理区との差、糖度の推移、果房の障害をそろえてから次の区画へ進みます。