結論:色だけを追わず、今季の損失防止を優先する
赤色・黒色系ブドウの色が薄いときは、最初に「高温による色素形成の抑制」「未熟や着果負担による成熟の遅れ」「果房周辺の光不足」「直射による日焼け」を分けて考える。農研機構によると、果皮を赤や黒にするアントシアニンの合成は高温で阻害される。高温だけが原因の着色不良なら、着色不良そのものが食味低下を意味するとは限らない。一方、日照不足、着果過多、未熟によって糖度が低い場合にも色は薄くなるため、果皮色だけでは両者を判別できない。
収穫が近い区画では、房の色を濃くしようと樹冠を大きく変えるより、地域の出荷基準に沿って成熟度を確認し、果房への急な直射、根域の過乾燥、一度の多量かん水を避ける。外観だけで高温障害、病害、生理障害を断定せず、変色の位置や広がり方を撮影して普及指導機関へ相談できる状態にする。作業記録には品種、満開日、着色開始日、区画、果房位置、作業日を残し、今季の応急管理と次作の設計資料を混在させないことが実務上の要点になる。
房色、成熟度、果面の変色を同じ記録票で分ける
農研機構の研究では、「巨峰」の着色不良予測を満開50日後、収穫のおよそ40日前に行う仕組みが開発されている。反射マルチ、誘引、摘心、葉摘み、着果制限、環状剥皮などの着色対策は、収穫の少なくとも1か月以上前に講じる必要があるためだ。満開50日後は同システムにおける「巨峰」の設定であり、他品種の固定基準ではない。収穫間近になってから大きな処置を加えても、収穫までに効果を評価できない可能性がある。
確認時は、同じ区画から代表する複数房を選び、カラーチャートなど地域で採用されている方法による果皮色と、糖度、酸味、食味などの成熟指標を別々に記録する。房全体が薄いのか、陽光面だけが黄変・褐変したのか、棚の欠けた位置に集中しているのかも分ける。農研機構は、日焼けを、果実温度が高い状態で直射日光を受け、その部分が局所的な高温となって黄色や茶色などに変色する障害と説明している。したがって、陽光面の局所的な変色を「着色不足」とみなし、さらに葉を外す対応は避ける。
摘葉と新梢管理は、着色の段階と直射の有無で止める
山梨県が2026年7月21日に公表した高温対策は、着色始めのブドウについて、過度な新梢切除や摘葉を控え、必要以上に棚面を明るくしないよう示している。まず午前と午後に同じ列を確認し、房の肩、袋や傘の周辺、棚の隙間へ直射が入っていないかを見る。色が薄いという理由だけで一律に摘葉せず、すでに果房が急に露出する状態なら作業を止める。弱い光が届く環境の改善と、盛夏の直射へ果房をさらすことは同じではない。
同資料は、新梢伸長が続く樹について、着色が全体に回った時期に新梢先端を摘心し、副梢を2〜3枚残して摘心する方法を示している。これは山梨県の高温時技術対策であり、すべての産地、品種、樹勢へそのまま適用する数値ではない。作業前に着色の進み方と新梢先端の伸長を区画ごとに確認し、地域の栽培指針を優先する。また、同資料ではシャインマスカットの日焼け・縮果症対策として果粒軟化期以降の新梢管理を示しており、赤・黒系品種の着色対策と混同しない。
水は根域の補給と夕方の冷却に分け、次作の対策を選ぶ
山梨県の資料は、着色期の夜温低下を目的とする例として、夕方のほ場散水を5ミリ程度、または棚面への散水を10アール当たり200リットルとしている。これは山梨県の条件に基づく冷却散水の目安で、根域全体へ水分を補給するかん水量とは目的が異なる。同資料の果樹全般の目安では、成熟期は約5日間隔で20ミリ、果実肥大期は4〜5日間隔で30ミリとし、一度の多量かん水を避け、収穫5〜7日前からかん水を控えるとしている。ただし、土質、根域、降雨、草生、水源能力によって必要量は変わるため、全国一律の運転設定にはしない。
冷却散水を実施する場合は、開始時刻、散水量、散水前後の気温、翌朝の葉や果房の濡れ、土壌水分を記録する。冷却散水をしただけで根域も十分に湿ったとは判断しない。反対に、根域へのかん水を棚面冷却と同じ効果として扱わない。病害リスク、使用可能な水量、地域指針を確認したうえで区画を限定して評価する。今季の着色がすでに遅れている場合は水分の急変防止を優先し、反射資材、環状剥皮、植物成長調節剤、着果制限、品種転換などは登録内容と地域基準を確認して次作の適期に計画する。
農林水産省の令和7年地球温暖化影響調査レポート速報では、果実肥大期以降の高温によるブドウの着色不良・着色遅延が、西日本の4〜5割の地域で確認された。報告された対応には環状剥皮、植物成長調節剤、黄緑色品種への転換などがあるが、これは都道府県から報告された取組の集計であり、個々の園地に直ちに適用できる処方ではない。満開後の温度、着果量、果房重、成熟指標、処置日と結果を蓄積し、単年の房色だけで長期対策を選ばないことが重要である。