農林水産省は2026年4月の高温対策通知で、果樹の着色遅延に伴って収穫が遅れ、果実が過熟にならないよう、糖度や食味を確認しながら適期収穫するよう求めています。令和7年地球温暖化影響調査レポートの速報でも、ブドウの着色不良・着色遅延は果実肥大期以降の高温によって発生し、西日本では4割から5割の地域で影響が報告されました。高温年に必要なのは色づきを待つ日数を増やすことではなく、成熟調査を平年より早く始めることです。満開日、着色開始日、前年の収穫実績を手掛かりに初回調査日を置きますが、前年と同じ月日を収穫日として固定してはいけません。

農研機構によると、気温が果皮色に影響する期間はおおむねベレゾーン期から収穫始期で、「巨峰」では満開後50~92日、「ピオーネ」では46~91日です。同研究では、この期間の気温が1℃高いと、収穫期のカラーチャート値が約1低下する関係が示されています。これは着色不良リスクの予測に使う研究成果であり、個々の房の収穫日を直接決める式ではありません。しかし、果皮色の進みと果肉の成熟が例年どおりに並ばない可能性を早く疑う根拠になります。予測された色だけで収穫を決めず、実際の果汁と食味を確認する工程へつなげます。

園地を品種、作型、満開期、樹勢、斜面、施設内の位置などで分け、成熟が同じように進む単位を一つの判定区画とします。各区画で健全な代表樹を複数選び、毎回その周辺から調査房を取ります。同じ房から繰り返し粒を抜くと房を傷め、残った果実の状態も変わるため、「同じ房」ではなく「同じ代表樹群、同じ採粒位置、同じ時刻帯」という規則を固定します。着色の良い房だけ、日陰の房だけを選ばず、区画を代表する房を偏りなく含めます。調査房の番号、採粒部位、採粒時刻、天候も記録すると、前回との差を解釈しやすくなります。

農林水産省は、ブドウは房の上側から成熟が進み、未熟な段階では上側が甘く、成熟に伴って下側の糖度が追いつく傾向を紹介しています。したがって肩部の甘い粒だけを測ると、房全体の成熟を実際より進んでいると判断するおそれがあります。房の上・中・下など、産地の調査手順で定めた位置から採粒し、果汁をよく混ぜて測定します。糖度計は使用前に点検し、採汁方法や測定温度をそろえます。果皮色も、産地が採用するカラーチャートを同じ明るさの条件で使い、観察者の印象だけで前回と比較しないようにします。

糖度が地域の出荷基準へ達したことだけでは、収穫決定には不十分です。酸味が強ければ食味が整っていない場合があり、反対に酸が抜け、果肉の締まりや果梗の状態が低下し始めていれば、着色を待つ間に商品性を損なう可能性があります。糖度、酸の指標、食味、果肉の締まり、粒の外れやすさ、病害や裂果の有無を同じ調査票へ並べます。農研機構の広域データでは、生食用の巨峰、ピオーネなどは成熟期が高温になるほど収穫期の酸含量が低くなる傾向を示す一方、平均気温26℃以上では酸含量がほとんど低下しない関係も示されました。気温だけから酸の抜けを決めつけず、果汁を実測する必要があります。

酸の確認にpHを使う産地もありますが、pHと滴定酸度は同じ指標ではありません。pHは果汁中の水素イオン活量に関わる値で、滴定酸度は中和に必要なアルカリ量から酸の量を表します。一方を他方の基準値へ読み替えず、選果場や普及指導機関が採用している測定法と基準を使用します。岡山県井笠農業普及指導センターは、井原市のピオーネで、従来の糖度と食味にpHメーターによる確認を加えた事例を公表しています。2025年度には部会内の収穫開始が前年より2~8日早まりましたが、これは同地域の取組結果です。その日数や測定値を別の品種、作型、産地へそのまま転用してはいけません。

調査結果は、その場で「収穫」「短期再確認」「保留」の三つに分けます。糖度、酸の指標、食味が産地基準を満たし、過熟兆候がない区画は収穫へ進めます。内部品質が整っているのに色だけが遅い区画は、出荷等級や販売先の規格を確認したうえで、色待ちによる品質低下と比較します。糖度不足、強い酸味、未熟な食感が残る区画は保留し、次回の採粒日を記入します。成熟が基準に近い区画や、果肉軟化、脱粒、晩腐病などの懸念がある区画は短い間隔で再確認します。全国一律の日数を設定せず、成熟速度、天気、販売先の条件に応じて普及指導機関と間隔を決めます。

収穫候補日だけでなく、収穫人数、容器、運搬車、選果・予冷能力も区画別判定表へ載せます。成熟が前進しても受入能力が足りなければ、結果として樹上へ残す時間が延びるためです。「成熟している区画」「過熟リスクが高い区画」「販売先の規格に適合する区画」の順に搬出枠を割り当て、測定結果が変われば毎回更新します。着果制限、環状剥皮、反射資材などの着色対策は、処理時期や樹勢、品種によって適否が異なります。収穫直前に一律で追加せず、当年は区画ごとの着色と成熟のずれを記録し、翌年の着果量、品種構成、管理方法を検討する資料として残してください。